思秋期 バンザイ!~人生下り坂を楽しむブログ~

旦那と一人の娘がいる50代なかばの獣医師。自分の好きなことを好きなだけやってきた。 子育てもひと段落。自分時間が持てるようになって、人生下り坂を楽しもう!思秋期 バンザイ!

動物園の獣医さん : ゾウさんに認めてもらうには?久しぶりの再会で…

4年間、動物園の獣医さんとして

働いていた

 

動物を治療しているうちに

その治療の魅力に

どっぷり、はまりたくなり

動物園の獣医さんの仕事を辞め

小動物臨床の仕事についた

  

 

 

今から、約25年も前のこと

こうして、ブログに書いていると…

忘れていた記憶が

どんどん思い出されてきた

 

動物園での日々は

がむしゃらに

全力で過ごしていた

 

小動物や家畜の動物、大人しい動物は

直接、動物と一緒に柵の中に入って

飼育をする

猛獣などの危険な動物は

人と動物が

一緒の空間にいることはない

 

その中で

ゾウさんという動物は異色だった

 

ゾウさんは、小さい時から

キーパーさんに世話をされ

キーパーさんが親がわり

 

しかし、ペットではない

そして、野生でもない

 

動物園動物として

その一生を、動物園ですごす

お互いが、より良く過ごせるように

調教をする

 

キーパーさんの調教を受けて

ある程度のハンドリングが

可能となっていた

 

おかげで、ゾウさんの体調が悪いとき

獣医さんであった私は

治療もできたし

検査のための、採血もできた

 

キーパーさんとゾウさんとの

信頼関係

一日二日で、出来るものではない

 

その、キーパーさんとゾウさんとの

関係があったからこそ

当時

新米獣医さんだった私でも

ゾウさんにふれあうことができた

 

 

 

動物園の獣医さんを辞めた後

10年ほど、経ってから

久しぶりに動物園を訪れた

 

寝室と運動場をへだてる

鉄骨のパイプごしに会ったゾウさんは

もはや

幼く可愛らしいしぐさの残った

ゾウさんではなかった

 

しっかりと成長した、大人のゾウさん

 

山のように大きく

その目の高さは

当時の2倍にもなっていた

 

メスのゾウさんが

鼻を伸ばしてきた

私は

その鼻にふれながら

 

「覚えているかい?

    覚えてくれていたら

    うれしいんだけど…」

 

と、息をふきかけた

 

 

そして

 

オスのゾウさんは

ムストと言う発情時期のため

近寄れなかった

 

側頭腺から流れ出る分泌液で

ゾウさんのこめかみから下の皮膚は

濡れていた

 

オスのゾウさんと目が合う

その目からは

やはり

何を考えているかは

私には分からなかった

 

ゾウさんが動物園にやって来た当時から

担当しているキーパーさんでさえ

ムストの時期には

全く手におえなくなるようだ

その苦労は、はかりしれない

 

私は、キーパーさんに

 

「オスのゾウさんは、どう?」

 

と、聞いてみた

 

「やんちゃすぎて、たいへんですよ」

 

さらりと答えてくれた

キーパーさん

 

そこには

ゾウさんに対する

あくまでも優しい眼差しがあった

 

 

 

 

 

 

思秋期 バンザイ!

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