大学を卒業して
保健所の職員となった
地方局に勤める公務員
公衆衛生の獣医さんである
そこでの
仕事の内容は、主に食肉検査だった
と畜場に行って
次々に流れてくる内臓や枝肉を
検査のため牛刀を使って
要所要所を切りながらチェックする
皆に安全な食肉を提供するため
と畜場の人からは
獣医さんは、ベテランも、新米も
「先生」
と呼ばれる
しかし
卒業したばかり
「先生」なんて
呼ばれ慣れていない頃のこと
まだ慣れない検査で
ラインに四苦八苦しながら夢中になって検査をしていた
周りのことは見えず
目の前の、検査で精一杯
何だか、周りが騒がしい
しかし、こちらは必死の形相で検査に夢中
「先生!先生!先生!危ない!」
一頭分の検査を終えて
周りの声が耳に入った
「?」
ふッと横を見ると
1tを超えるような、種豚さんが
フゴフゴ言いながら
迫って来ている
すぐ隣で検査していた、先輩獣医さんどこに?
見上げると
検査台の上に、登っている
「はっ!逃げなきゃ」
私も、一緒に検査していた先輩獣医さんのように
腰の高さの検査台の上に
飛び乗った!
そして種豚は
私が立っていたところを
何もなかったかのように
フゴフゴ言いながら
通り過ぎて行った・・・
「先生、大丈夫~」
内臓を処理している人からも、ねぎらいの言葉
『あっ、私は先生と呼ばれるんだ』
と、この時、はじめて認識したのを覚えている
「◯◯さん、運動神経いいね~
にぶい人だと、検査台に登れず
ワタワタしているんだけど
素早かった」
と、素早く検査台に飛び乗っていた
先輩獣医さんからも、おほめの言葉
後にも先にも
豚さんが迫って来たのはこの一回のみ
人生、生きていると
色んなことを体験できますわー
はい…
アイキャッチ・イラスト: YUKOさん
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