思秋期 バンザイ!~人生下り坂を楽しむブログ~

旦那と一人の娘がいる50代なかばの獣医師。自分の好きなことを好きなだけやってきた。 子育てもひと段落。自分時間が持てるようになって、人生下り坂を楽しもう!思秋期 バンザイ!

動物園の獣医さん : ゾウさんの採血

 

ある日

ゾウさんの担当のキーパーさんに

ゾウさんの採血をして欲しいと言われた

 

 

ゾウさんの採血

どこから?

 

 

人は、腕から

イヌやネコは、前足、後足、首からも採血する

 

ゾウさんは、あの大きな耳から

正確には、耳のうしろ 

 

しかし、大きなゾウさん

耳に手が届く?

 

私がいた動物園のゾウさんは

キーパーさんが

ゾウさんと展示場に一緒に入る、直接飼育

 

展示場には一緒に入らない、間接飼育もある

 

直接飼育で、大きなゾウさんが、

飼育下で人間の号令をきいてくれると

何かあった時に、直ぐに対応ができる

 

そのため

キーパーさんは、日頃から

ゾウさんの調教を行なっていた

そのおかげで、採血も可能となる

 

しかし

ゾウの採血なんて、初めてのこと

すでに採血をおこなっている

動物園の獣医さんに連絡を取り

その手技、コツを教えてもらった

何度も、頭の中でシュミレーション

 

採血用の

注射器、針、試験管、アルコール綿

その後の検査方法など

無駄のないように準備した

 

そして

 

週に一度の採血が、始まった

 

 

展示場から、寝室に入ったゾウさんは

いつも通り、繋留され

キーパーさんの号令のもと、フセの体勢となり

キーパーさんは、採血しやすいよう

耳を広げて持ってくれる

 

もう一人のキーパーさんが

美味しい好物のリンゴなどの餌を

少しずつ与えてくれている間に

 

耳の後ろ側から

アルコールで消毒

手で血管を圧迫

プックリと怒張した血管に翼状針で針を刺す

シリンジをつけて、ゆっくりと血をとる

 

ここで、気をつけなければならないのは

耳の裏側に走行している筋

血管によく似ているので、間違えやすい

ここを、血管と間違えて針を刺しそうになる

慣れるまで

何度か、ここを刺してしまった

ごめんね

 

冬の寒い日などは、血管が収縮していて

血管がプクっと、でてこない

 

キーパーさんは

寝室に暖房を入れて

ホッカイロを耳に貼り付けてくれたりして

採血が、スムーズに行えるように

準備してくれる

 

採血が終わった後には

必ず、リンゴを手渡しで食べてもらっていた

 

少しでも

嫌われないように

 

採血された血液は、試験管に移され

動物園の動物病院に持ち帰り検査をする

 

白血球数、赤血球数、血液の濃度

肝臓の機能、腎臓の機能などの値を測る

 

残った血液は、冷凍保存しておく

 

この採血した血液を検査する事により

色んな情報を集めていった

 

この時

まだゾウさんは若く、性成熟になっていなかった

そのため

ホルモン検査の値は、低かったが

 繁殖のためのデータが、溜まっていった

 

 

このように、動物園では

レクレーションの場だけではなく

調査・研究の場としても

重要な目的がある

 

 

その

大切な目的にたずさわれただけでも

よかったと思う

 

 

 

 

 

思秋期 バンザイ!

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