思秋期 バンザイ!~人生下り坂を楽しむブログ~

旦那と一人の娘がいる50代なかばの獣医師。自分の好きなことを好きなだけやってきた。 子育てもひと段落。自分時間が持てるようになって、人生下り坂を楽しもう!思秋期 バンザイ!

動物園の獣医さん : ゾウさんに認めてもらうには?運動場に入る

ゾウさんがいるエリア担当の獣医さんになってから

ちょくちょく

時間を作っては

ゾウさんの運動場に入ってみた

 

これが、また根性がいる仕事

 

まだ、子供とはいえ

私の背丈はゆうに超え

体重も重い

目の前にくるとその迫力に圧倒され

後ずさりをしたくなる

 

ゾウさん達は

珍しい人間が入ってきたと

興味を持って、近寄ってくる

巨体の身体をすりつけ、近寄ってくる

 

そのながーい鼻で

 

スーーハーー

スーーハーー

 

鼻水をつけられながら

身体中のにおいをかぎまくられる

 

その、圧倒的な存在感に恐怖をおぼえ

初めて入った時

その巨体に押されると

逃げ腰になり

コンクリートの壁の内側へ逃げ込んだ

 

ゾウさんはこの壁の内側に入って来れない

ゾウさんは、壁の外側から

鼻を伸ばして臭いを嗅いでくる

 

「どうしたの?

    なんでそんな所にいるの?

     早く出て来て、遊ぼうよ!」

 

とでも言っている様に

 

しかし、また運動場に入ると

圧倒されて逃げ込む

 

これをしていると

ゾウさん担当のキーパーさんに

注意を受けた

 

「壁の内側にばかり逃げていたら

    悪いくせになってしまうから

    出来るだけその様な行動は

    しないで欲しい」

 

「それでは、どうしたらいいのか?」

 

と、分からないので質問すると

 

「上手くかわして欲しい」

 

との答えが返ってきた

 

しかし

 

どのようにしたらこのゾウさん達を

かわせるか…?

 

そして、もうひとつ

重要なアドバイス

 

「ゾウさんの間に、入らないように❗」

 

ゾウさんとゾウさんの間に

はさまれて、押し付けられたら

その巨体で潰されてしまう

 

たしかに

ゾウさんの身体にはさまれでもしたら

手でなんて押しのけられない

人間の力なんて非力なものだ

 

このアドバイスを胸に

何とか、頑張った

自分の中には

壁の中に逃げたい自分がいる

何で

自分はこんな思いをしてまで

ここに居るのだろう?

 

しかし  

覚悟を決めるしかなかった

 

壁の内側に逃げてばかりいると

自分の弱さを

ゾウさんに見せることになる

その弱さを見られると

ゾウさんが優位に立ってしまう

 

出来るだけ運動場の広い所に出て

受け流しを試みた

本来なら

毎日のように運動場を訪れ

自分がそこにいて当たり前の人間だと

ゾウさんが認識してくれたらいいのだろうが

収容時間に立ち会う以外

なかなか、訪れる機会が取れない

 

そうすると

たまにしか来ない人間は

ゾウさんにとって興味の対象になる

 

すり寄ってくるゾウさんを

横に移動して

かわしてみるが、なかなかこれが難しい

 

ボクシングや柔道でも

習っていたら良かったか?

 

ゾウさん担当のキーパーさんは

何かあれば、すぐに対応できるように

一緒に運動場に入ってくれているが

そちらに

ゾウさんは、知らん顔

 

キーパーさんは、

モクモクとゾウさんの大きなウンチを

スコップですくっては

一輪車に入れていた

 

やはり、こっちの方が珍しいのか

すり寄ってくる

 

ゾウさんは、その大きな体からは

考えられないほど

身のこなしが軽やか

結構素早く動く

 

かわしたつもりが

あっという間に、ゾウさんに先回りされて

頭で、体で押してくる

 

 

動物園のゾウさんとの

胃がキリキリと痛くなるやりとり

 

今、思えば

貴重な体験だったと思うのだが

 

当時の、自分は必死だった

ゾウさんに認めてもらいたい一心で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思秋期 バンザイ!

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