動物園でよく見かける
白と黒のシマシマ模様の動物
シマウマ
大自然では走り回っている
足が勝負の動物だ
しかし
動物園ではあまり走る機会がない
そのため
蹄が伸びてくる
まるで
魔法使いの靴をはいているように
長く伸びた蹄は、足に負担がかかる
そこで
定期的に麻酔をかけて
削蹄しなければならなかった
その頃
麻薬性の麻酔薬の許可は
とっていなかったため
3種類の薬剤を組み合わせ
吹き矢に入れて何本も注射していた
体重も測定できなかったため
おおよその体重で計算する
そのため
麻酔するときは、いつも悩む
効かなければ、暴れて削蹄できない
効きすぎると、身体に負担がかかり
死亡の危険性となる
以前、麻酔した時の状態を参考に
その量を増減
それでも
その時の状態、体調で
効きすぎたり、効かなかったり
頭を悩ませながら
シマウマの麻酔の準備をしていた
削蹄する部屋は
シマウマが暴れて当たっても
ケガしないように
防護用のゴム製の分厚い干渉材を
壁に張ってあった
群れから離され
狭い削蹄部屋に入れられたシマウマは
落ち着かない様子で
ウロウロ
ウロウロ
何をされるんだろうと
不安そうだ
シマウマは動物園で飼育しているが
人に馴れない動物だ
人間の生活に順応し
役にたっているウマと違って
担当のキーパーさんにでさえ
いつも、警戒を怠っていない様子だった
不安そうに、耳をピンと立てて
落ち着かない様子で
歩きまわるシマウマに
窓や戸の隙間から
筋肉の厚い、お尻や肩に向けて
吹き矢をふいていく
フッ
フッ
フッ
シマウマの筋肉は
むっちりとして張りがある
このため、吹き矢を吹く角度が悪いと
何本か失敗する
そのため
少し多めに吹き矢を準備している
お尻や肩に吹き矢が何本も、命中
5~6本の吹き矢を
身体につけたシマウマ
麻酔が効くのを
かたずを飲んで見守る
麻酔が効きだすと
フラフラし、座りこんだり倒れたり
そして
横になると、キーパーさんが数人
寝室に入り、ガッチリと保定
足にロープをかけて動かないようにする
削蹄時に、動くと危ない
キーパーさんは
ヘルメットを被って軍手をしている
削蹄には、電動グラインダーを使っていた
前後の蹄を、同時に削って行く
グイイーーーーーン、グイングイン
次々に
蹄の削りカスが
床に散乱してくる
蹄を削りだすと
ツンッと、鼻をつくような
蹄のにおいが狭い部屋に充満する
みんな、汗だくだ
蹄が伸びすぎると、足に負担がかかり
血管も伸びて少し削っただけで出血
そうならないように
定期的に削蹄をしなければならなかった
しかし、すぐに伸びてしまう
それが、何頭も
シマウマの削蹄には
人手が必要なので
みんなの予定を調整して
定期的に、繰り返し削蹄をしていた
削蹄が終わると
出血のあった蹄から
細菌感染がおこらないように
蹄に軟膏を塗る
お尻に、抗生物質の注射
頸静脈に、麻酔から覚醒させる薬を注射
「うち終わった❗」
の掛け声に
シマウマを保定している人は
その部屋から素早く出ていく
筋肉に注射するのと違って
頚静脈に注射すると
醒めるのもあっという間だ
シマウマが立ち上がるのを
かたずをのんで見つめる
麻酔は
ききはじめ(導入期)と
目が醒めるとき(覚醒期)が
一番危険
窓の隙間から、麻酔が醒めるのを見守る
2、3回フラフラ転ぶものもいたが
おおむね、スクッと立ち上がってくれた
しっかりとした
足取りになったのを確認して
その場を後にする
麻酔をかける時はいつも真剣勝負
麻酔から醒めた動物を確認して
笑顔が戻った
*引き続き、読んでもらいたいブログ
動物園の獣医さん:シロクマの治療
https://ogumakivet.hatenablog.com/entry/2019/08/26/073110
アイキャッチ・イラスト: はるいらさん
思秋期 バンザイ!
~人生下り坂を楽しむブログ~